会津磐梯高原に位置する、諸橋近代美術館。世界でも有数のサルバドール・ダリの作品の収蔵数を誇り、「ダリ美術館」とも言われています。また五色沼からもほど近く、美術館の庭園からは美しい磐梯山も臨むことができます。
まずは美しい景色に感嘆
降りたバスが去って視界がひらけた瞬間に、これはとんでもない(素晴らしい)ところに来ちゃったな!! という景色。白い雲が流れる青い空、深い緑の木々。美術館の敷地内を流れる川の水の音に、堂々たる風格の美術館の建物。全てのコントラストのバランスが完璧に感じて、思わず「うわ〜!」と声も出ますわね。
エントランスまでのアプローチも美しく、大自然の景観に溶け込みながらも、美術館として作り上げられていると感じました。美しい。澄んだ空気を感じて、視覚からだけでなく美しさを感じているような気がします。
会館期間は雪解けから降雪前まで
開館期間は、雪解けから降雪が始まるころまで。(2022年は4月27日~11月13日)その間に、2つの企画展が催されます。今回訪れた企画展は「ヒストリア」。ダリ作品から神話を紐解いていく内容です。こちらの会期は7/3までで既に終了。7/25〜は新たに「ROOMS」という、6つのテーマに沿ってキュレーションされた展覧会が開催されます。
観覧料はキャッシュレスも可。フリーWi-Fiもあって安心
正面の入り口へまわると、どことなくウェルカムなムードの入り口が。足元のマットには「DALI」の文字と這い寄るアリの絵柄。アリのご案内を受けて正面へ進んでいくとチケットカウンターがあり、その向こうにミュージアムショップがあります。
観覧料は一般1300円。クレジット決済、電子マネーと各種バーコード決済も使用できます。電波が弱くてバーコード画面がなかなか読み込めずに困っていたら、パスワードなしのフリーWi-Fiを案内してくださいました。ちなみに、あらかじめWEBでアンケートに答えておくと、入場料100円割引のサービスが受けられます。
音声ガイドは無料アプリで利用可能
展示作品に関する情報をアシストしてくれる音声ガイドは、無料アプリで利用可能。手持ちのスマホに「ポケット学芸員」というアプリをインストールして利用できます。必要な箇所を選んで再生できて便利でした。
今回観覧した企画展「ヒストリア」は、神話に関わるダリの作品を展示するもの。神話だけでなく、カルメンやドン・キホーテなどの文芸作品の挿絵なども展示されており、ダリの見る文芸作品の世界を垣間見ることができます。また、ダリにとってのミューズである、母親、妹、妻をモチーフにした作品のも展示されています。
神話や文芸作品のストーリーからダリがイメージする世界が、独特なタッチで描かれ、いかにもダリの世界観。愛と熱量を持って描かれた作品には、息を飲む美しさと不思議なあたたかさを感じました。
美術の教科書や資料集などで目にするダリ作品のタッチとは大きく違うものも多くあり、いかに限られた作品で語られているのかという点で、やはり足を運んで良かったと実感しました。実際に作品を見て体感を得るという経験の尊さを併せて感じたところです。
持ち帰れる思い出を手に取って
ひととおり作品を見終えたところでミュージアムショップへ。こちらも充実のラインナップ。特筆すべきは図録の豊富さ。過去の企画展の図録のほかに、公式ガイドブックも販売されています。オリジナルのポストカードやチケットホルダー、ハンカチやトートバッグなどの定番商品も充実。
画像右上《ダンテ「神曲」煉獄篇 第十二歌 アラクネ》のポストカードは、展示作品にもあった、ギリシア神話の織物の名手のアラクネを描いたもの。「機織りの技を、知識・技芸・武の女神であるアテナと競ってその驕慢を罰せられ、そんなに機織りが好きなら、生涯その糸で機を織れるようにと蜘蛛に変えられた」というストーリーに惹かれ購入しました。女神に盾突くということは……という、権力の絶対性と商人欲求や自己顕示欲を拗らせる愚かを見たような気がしました。
さらに、アーティストコラボの商品も展開されており、今年はイラストレーターのCoffee Boyが担当。コーヒーとダリ。シンプルなのにポップでおしゃれな、Tシャツやトートバッグなどを展開。他にも豆皿やこけしなど、地域の工芸品も展開されています。
余韻に浸りながらカフェでゆったり
ミュージアムカフェのメニューも充実しており、コーヒーもシングルオリジンとブレンド、紅茶、ハーブティーの他に、100%果汁のみかんジュースやぶどうジュースも楽しむことができます。さらに、ケーキや軽食のセットもあり、開館と同時に入館してランチを楽しみもうひと回り、なんていう楽しみ方も出来そうです。
バンブー素材を使用したタンブラー、ドリップバッグやハーブティーの販売もしており、持ち帰れる思い出として、ちょっとしたお土産にもぴったり。
今回はすっかりティータイムとなっていたため、軽食のセットは完売。本日のケーキのチーズスフレとコーヒーをセットで。セットのコーヒーは「トラジャ」。スラウェシ島のお豆で、チーズやバターなどコクのあるフードとの相性の良いもの。セットドリンクは、コーヒーのほかに紅茶とみかんジュースなども選べました。
窓際のソファ席をお借りしてゆったりと。窓から見える池には睡蓮の花が咲いており、思いがけず季節を楽しむことができました。また別の席の窓からは美しい庭園と雄大な自然を臨むことができます。筆者が訪館した日は快晴の真夏日。空の青さと木々の緑のコントラストが美しく、雨の日もまた、違った趣の美しさがあるのでしょう。
公共交通機関で行くなら時間を要チェック
最寄駅はJR猪苗代駅。そこからバスで約30分ほどの、諸橋近代美術館前バス停で下車。整理券を取っての現金後払い。車内で両替もできますが、あらかじめ小銭を用意しておくほうがよさそう。(780円/片道)
公共交通機関を利用する際は、時間調整に注意したいところ。郡山までの新幹線が便利ですがその先で、タイミングによっては1時間の待ちが発生することも。新幹線→JR、JR→バスと、この辺りは気をつけたいところです。猪苗代駅前に飲食店は少なくコンビニまでも距離があるため、飲食店のお休みと重なると待合室で過ごす他ない環境。今回は駅前の喫茶店が営業しており、そちらに身を寄せていました。乗り換え案内と時刻表をうまく活用してベストな工程を組むのも、パズルのように楽しみたいところです。
ダリが好きなら行くべし!
とはいえ、シュルレアリスム好きとして1度は訪れたかった美術館。5年前に逃した企画展に行かなかったことをずっと悔いていたので、今回の訪問で昇華できたような気がします。お近くの方はもちろん、遠いかな〜と感じている方も、少しでも興味があるなら行って損はないでしょう。行かないで悔いるくらいなら、行ったほうがいい。何においてもそうですが、強く実感する経験ができました。